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18. 御稲御倉

  18-IMG_1153.jpg    

9月1日、伊勢神宮の神田で新米の稲刈り儀式「抜穂祭」(ぬいほさい)が行われた。抜穂とはなにやら曰くありげだが、鋭利な鎌がなかった頃には稲穂を抜いて収穫していたそうで、神宮でも古式通りに神職さんが刈り取った稲から穂を1本ずつ抜き取り、その束を神に供して感謝の祈りを捧げる。新しい稲穂は内宮と外宮に納められて、10月15日から始まる神嘗祭(かんなめさい)で使われる。

抜穂祭が終わると3ヘクタールの神田では本格的な稲刈り作業が始まる。うるち米ともち米の新しい穂は乾燥させた後に内宮にある米倉、「御稲御倉」(みしねのみくら)に納められて、神嘗祭に続く一年間のお祭りの飯、餅、神酒などに充てられる。 

8-IMG_1212.jpgさて、その御稲御倉だが、どこにあるの
かというと、内宮正殿のちょっと手前、「荒祭宮」(あらまつりのみや)の案内が立つ森の小道を入ったところにある。高床式の小さな社は長い足ですっくと立つ小鹿のようだ。

神宮独特の建築様式「唯一神明造」の原型にもっとも近いものと言われ、神宮内で唯一、垣に囲まれていないので身近で、じっくりと見られるのがうれしい。それにしても、昼なお暗い、こんな森の中になぜ倉を建てたのだろうか。当初はこんなに木が茂ってなかったのだろうが、中に納められた稲穂は大丈夫なのか。

神宮で禰宜を務めていた矢野憲一氏によると、「御扉をギィーと開けたその瞬間、なかからは生暖かい、懐かしい、お米の香りの風というか『氣』が一瞬吹き寄せる。いつも私は思わずひれ伏し

た」(「伊勢神宮~知られざる杜のうち」)そうだから、内部の心配は無用のようだが外はどうか。5月下旬頃から屋根に生えはじめた小さい雑草たちが、長引いた梅雨を謳歌して、ぐんぐんと成長して、よく見れば紅葉の木まで芽吹いているではないか。

腕をいっぱいに伸ばしてぐいっとあの草を、この草を引き抜いてしまいたい――。そんな衝動に駆られてじりじりしながら屋根を見つめている横を何人もの参拝客が私と屋根を交互に見ながら通り過ぎて行った。なかに 「どうしたんですか?」と訊いてくれた若いカップルがいた。御稲御倉の役割と雑草のことを語ると、憂い顔でお屋根を見上げてくれていたが、「すみません、あの草をバックにシャッターを押してくれませんか」と、二人並んでにっこり。

神宮のお宮はここに限らず、今年の長雨でぐっと傷みが増し、鳥居も黒ずんでしまった。外宮さんも同様だ。ご本殿の拝所屋根の苔はめっきりと濃さを増し、屋根もたわんできた。外宮の森に建つ美しい風宮は「陽が当たるように後ろの木の枝を掃って、屋根を修理しました」というわけでお屋根が継ぎ接ぎだらけ。萱ぶき屋根なので草を抜くとかえって痛みが増すのだそう。「それにカブト虫の巣があったりするので、根を引き抜く代わりに、刈り取っているんですが、それだとすぐにまた伸びてきてしまいます」と神職さん。

萱ぶきなので雨が続くと上部は草が生えやすいが、独特の工法でみっしりと萱を詰めて葺いあるので雨水は容易には内部へ浸み込まず、ご遷宮の建て替えまで四年もあるが、「まだまだ大丈夫です」。幾重もの八重垣に囲まれたご正宮には参拝叶わぬが、「日当たりの良いところに建っておりますので問題ありません」とキッパリ。確かに、拝所横の垣根越しにのぞいた限りはお屋根についた苔も薄く、それも日に照らされて乾いていた。 


18-IMG_0713.jpg
外宮ご正宮の拝所。屋根の苔が重そうだ。


18-IMG_1223.jpg 
こちらは苔がアクセントになってか美しい。内宮五丈殿の屋根。

 さきごろ、東京で三十代半ばのお医者さんに、「伊勢神宮はしょぼい神社だった」とぼやかれた。「日本最高の神社」だというので5月の連休にわざわざ伊勢神宮を見に行ったのに、「ぱっとしない宮さんでガッカリした」そうだ。「延々と参道を歩いて、高い石段をフーフー上ってやっと着いてみれば、なんともしょぼい神社」と繰り返す。どれも拝所の印象ばかりなので、ご本殿はあの後ろにあるんですよ、というと「エッ、知らなかった!そこまでは行かなかった」と口惜しがる。「行けるのは天皇陛下だけですからご心配なく」と慰めたがなんとも腑に落ちない様子だ。どうも神社に対するある確固たる観念というか揺ぎない先入観をお持ちのようなので、出身地をきいてみると――「栃木県です」と怪訝そうな面持ち。あまりのよく出来たオチにワタシは声を上げて笑い、むせて、涙がこぼれた。

涙をふきふき、「徳川家康さんの日光東照宮みたいに派手な色はついていないし、仁王さんもいない。ねむり猫も三匹の猿もいませんが、伊勢神宮は天照大神さんのお宮ですよ」とからかうと、「でも日光東照宮は世界遺産だ」と胸を張った。 



 

 

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mimosusor

Author:mimosusor
伊勢に生まれながら小さいときから都会大好き。中学校を終えると、ひとりで大阪の学校へ進み、その後は東京で就職。しかし、日本最大の都会にも物足らず、世界の大都会ニューヨークへ。あぁ、ここぞ探していたわが棲み処、もう動くまいと感涙にむせびながら腰を下ろしてから十余年。

仕事で一時帰国していたとき帰郷したのが事の始まりというか終わりというか、「ニューヨークへ帰るの、やめた。伊勢に住む!」となりにけり。

そのわけ?なんたって伊勢神宮ですよ。何十年ぶりかで訪れた伊勢神宮をひとめ見るや打ちのめされてしまったのです。なにが、なにに、なにしたのか。その顛末はブログをどうぞ。

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